2025年10月以降に、院長が実際に診察した中で印象に残った症例です。今後も順次追加してまいります。土曜・日曜に受診できる医療機関をお探しの方は、どうぞお気軽にお越しください。
- 肩痛 ▷肩関節脱臼
他の内科クリニックの待合室で転倒し、右肩を打撲された80代の女性の症例です。土曜日の午後、急遽当院を受診されました。右肩の強い痛みと腕が上がらない状態を訴えており、骨折の可能性もあると判断して、当院のCTで詳しく確認しました。その結果、骨折はありませんでしたが、右の上腕骨が肩の関節(肩甲骨の受け皿)から外れており、肩関節脱臼と診断しました。まず局所麻酔で痛みを和らげた後、整復を行い、レントゲンで正しい位置に戻っていることを確認しました。診察では神経の障害はみられませんでしたが、腱板損傷を伴っていると考えられました。そのため、消炎鎮痛剤の処方と、肩の動きを回復させるためのリハビリ治療を行うこととしました。また、再脱臼を防ぐために、専用のサスペンダーによる固定も実施しました。なお、既往に高血圧や糖尿病があり、多くの処方薬を内服されていたため、薬の副作用にも十分に配慮しながら治療を行なっています。
※2025年9月まで勤務していた名古屋市立大学病院の救急外来で、救急科の医師2名でも整復できなかった肩関節脱臼の症例を経験したことがあります。全身麻酔を行ない、医師3名でようやく整復することができました。
- 頸部痛 ▷頸椎偽痛風(クラウンデンス症候群)
突然の激しい首の痛みと、首を全く動かせない(回らない)状態を主訴に来院された70代の女性の症例です。過去に手首の「偽痛風」と診断された既往がありました。当院でCTを行なったところ、首の骨(第2頸椎歯突起)の周囲に石灰化(カルシウムの沈着)が認められました。 その特徴的な画像所見から、 「頸椎偽痛風(クラウンデンス症候群)」と診断しました。消炎鎮痛剤を処方したところ、数日で痛みや可動域制限は改善しました。
※ 「クラウンデンス症候群」という名前は、首の骨(歯突起)の周りに沈着した石灰が、CT画像で「王冠(クラウン)」を被っているように見えることから名付けられました。 この病気は、激しい首の痛みや発熱を伴うことがあり、一般的なレントゲン検査では石灰化が写りにくいため、診断がつかずに「ただの寝違え」や「髄膜炎」と間違われてしまうことがあります。 確定診断にはCTが不可欠であり、早期に正しい診断ができれば、痛み止め等の内服で速やかに改善することが多い疾患です。なお、名前に「偽痛風」とつきますが、尿酸が原因の「痛風」とは異なり、こちらは「ピロリン酸カルシウム」が原因となる別の病気です。
- 肘痛 ▷肘内障(橈骨頭亜脱臼)
日曜日の午後に、右肘の痛みと右腕を動かさない様子を訴えて母親と来院された3歳の女児の症例です。母親が手をつないで歩いていた際に腕を引っ張ったあとから痛みが出たとのことで、肘内障と考えられました。すぐに回外法で整復を行い、その後は腕がスムーズに挙上できるようになりました。
※ 肘内障の原因として最も多いのは、手や腕を急に引っ張ることですが、転倒して手をついた際にも生じることがあります。特に1〜5歳の小児に多くみられます。5歳を過ぎると発生頻度は減りますが、整復が難しくなる場合があります。整復後は1週間ほど無理な動作を避けることが大切です。再発を防ぐためには、手や腕を直接引っ張らず、服の袖や背中に軽く手を添えて誘導するようにしましょう。なお、骨折を除外するためにはレントゲン撮影が望ましいものの、小児では痛みや恐怖心から撮影がスムーズに行えないこともあります。また、整復から数日経っても痛みや腫れが残る場合には、CTによるより詳しい評価も可能です。
- 膝痛 ▷大腿骨頸部骨折
自宅で転倒し、右膝の痛みを訴えて来院された70代の女性の症例です。ご自身では歩行できず、ご家族に付き添われて来られました。ところが、痛みを訴えている部位には、歩行困難になるほどの強い圧痛や腫れはみられませんでした。そこで右脚の付け根(股関節の前方)を触診したところ、強い痛みがあり、股関節を曲げることもできない状態でした。大腿骨近位部の骨折を疑い、当院でCTを行なった結果、右大腿骨頸部骨折が確認されました。大腿骨頸部骨折は多くの場合、手術が必要となるため、手術が可能な高度医療機関へ紹介しました。
※このようなケースでは、痛みの部位だけに注目してしまうと、重大な疾患を見落としてしまうことがあります。大腿骨近位部骨折は、骨粗鬆症を背景に起こりやすい骨折であり、橈骨遠位端骨折・上腕骨近位部骨折・腰椎圧迫骨折と並んで、高齢者に多い「四大骨折」の一つです。
- 足痛① ▷Jones骨折(第5中足骨骨折)
左足外側の痛みと、それによる歩行困難を主訴に来院された80代の女性の症例です。ご本人によると、これといったケガのきっかけは思い当たらないとのことでしたが、診察にて同部位に圧痛を認め、レントゲン撮影を行いました。その結果、足の甲の外側にある骨(第5中足骨)の骨折、いわゆる「Jones(ジョーンズ)骨折」と診断しました。今回は保存療法を選択し、ギプスによる固定を行ないました。また、明らかな外傷がないにも関わらず骨折していたことから、背景に骨の脆弱性があると考え、後日骨密度検査を実施しました。結果はYAM(若年成人平均)40%台と低下を認めたため、骨折の治療と並行して、骨粗鬆症に対する治療も開始しました。
※ 足の小指側の甲にある骨(第5中足骨)の骨折は、折れる場所によって「下駄履き骨折(剥離骨折)」と「Jones骨折」に分けられます。特にJones骨折は血流が乏しい場所で起こるため、非常に骨がつきにくく、治りにくい(難治性)のが特徴です。そのため、スポーツ選手や活動性の高い若い方の場合は、早期復帰や偽関節(骨がつかない状態)を防ぐために、手術(スクリューによる固定など)が必要になることが一般的です。一方、小児(特に10歳〜15歳頃の成長期)では、骨折ではなく成長軟骨の炎症である「イセリン病(骨端症)」の場合もあり、適切な診断が求められます。今回のケースのように、高齢の方では重度の骨粗鬆症がある場合、日常の歩行などのわずかな負担だけで折れてしまうこともあるため、全身の骨のチェックも重要です。
- 足痛② ▷痛風発作
左足母趾(親指)の付け根の激しい痛みを訴えて来院された50代の男性の症例です。診察では同部位に明らかな腫れと赤み(発赤)を認め、歩行も困難な状態でした。受診の1ヶ月前に受けた健診で血清尿酸値が9.0mg/dl以上と高値を示していたことから、典型的な痛風発作と診断しました。詳しくお話を伺うと、500mlのビールを毎日2缶飲まれており、ここ最近体重の増加もあったようです。こうした生活習慣が原因の一つと考えられたため、節酒や減量をお願いしました。まずは消炎鎮痛剤を処方したところ、数日で痛みや腫れは改善しました。その後は、再発予防のために尿酸生成抑制薬を開始し、定期的な採血で尿酸値をチェックしながら経過をみています。
※ 痛風発作の原因となる「高尿酸血症」を放置すると、発作を繰り返すだけでなく、腎臓にダメージを与え機能低下(痛風腎)を招くことが知られています。 そのため、痛みが治まった後も治療を終了せず、長期的に経過をみていく必要があります。なお、痛風の原因には飲酒や肥満だけでなく、遺伝的な要因も知られています。
- 腹痛 ▷総胆管結石
突然の右上腹部痛と嘔吐、そして苦悶状の表情を呈し、入所中の施設から来院された90代の女性の症例です。診察では右上腹部に圧痛を認めました。急性腹症を疑い、当院でCTを行なった結果、総胆管下部に結石を確認しました。総胆管結石の治療は、内視鏡を用いて結石を摘出することが第一選択となるため、摘出が可能な高度医療機関へ紹介しました。
※ 急性腹症の診断にはCTが欠かせません。結石が胆管を塞ぎ、細菌感染を合併すると急性胆管炎を発症し、高熱や黄疸、悪寒・戦慄などの症状がみられることがあります。ただし、高齢者では症状が出にくく、急性胆管炎を起こしても初期の段階でははっきりしない場合があります。
- 発疹 ▷帯状疱疹
土曜日の午後に、数日前から右下腹部に多発する赤い発疹を主訴に来院された70代の男性の症例です。発疹は右下腹部から背中にかけて帯状に広がっており、一部には水疱もみられました。発疹が出る数日前から同部位に違和感があったとのことです。身体所見から帯状疱疹と診断し、直ちに抗ウイルス薬による治療を開始しました。後日、血液検査でも水痘・帯状疱疹ウイルス抗体価が128倍と高値を示し、診断を裏づける結果となりました。
※帯状疱疹は、加齢や疲労、ストレス、糖尿病などによる免疫力の低下がきっかけで発症しやすくなります。発疹や痛みが治まった後も、「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる強い痛みが残ることがあるため、早期の診断と治療が大切です。なお、目や耳の周囲に生じる帯状疱疹は、重い合併症を引き起こすことがあるため注意が必要です。目の周囲に発症した場合には、角膜ヘルペスによる視力低下や失明、物が二重に見える複視などを生じることがあります。また、耳の周囲に発症した場合には、「ラムゼイ・ハント症候群」と呼ばれる、めまいや難聴、顔面神経麻痺を伴う症状が現れることがあります。
- 発熱 ▷新型コロナウイルス感染症
日曜日の午前に、前日から続く発熱、咽頭痛、咳を主訴に来院された80代の女性の症例です。新型コロナウイルス感染症またはインフルエンザを疑い、当院の応急処置室にて、両者を同時に検査できるキットを用いて確認したところ、すぐに新型コロナウイルス感染症と判明しました。基礎疾患は特に認められず、対症療法を行いました。
※ 新型コロナウイルス感染症では、発症から回復した後も、倦怠感や咳、嗅覚・味覚異常、集中力の低下などの後遺症(いわゆる「コロナ後遺症」)がみられることがあります。症状が長引く場合は、早めの受診や相談が大切です。また、細菌性肺炎を合併することがあり、その場合には重症化リスクが高まります。肺炎を否定できない場合には、CTによる精密検査も可能です。
※※日曜日は休診の医療機関が多い中、当院では即日の検査や処方が可能です。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが疑われる方については、車で来院される場合は、これまで通りドライブスルー方式で対応いたします。タクシー・バイク・自転車・徒歩で来院される場合には、応急処置室にて検査・治療を行います。
